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貧乏女優のルーマニア便り

新連載! 第1回

Buna ziua!(ブナ・ズィウア…こんにちは!)

根本陽子
東京演劇アンサンブル・演劇集団アンゲルス/俳優部所属。「奇蹟の人」<アニー・サリバン>「十二夜」<ヴァイオラ>「オセロ」<デズデモーナ>ほか多数出演。「桜の森の満開の下」<生首>では踊り手としてイギリス、ブリヤート共和国、韓国、アメリカ公演に参加。「沖縄」<垣花シズ>ではイタリア、ベトナム、「かもめ」<ニーナ>で日本人として初めてモスクワ芸術座の舞台にたつ。
現在、文化庁の在外研修生として、ルーマニアに演劇留学中!
URL:http://fame.calen.ne.jp/~yoko/
E-mail:yokonemoto66@hotmail.com



ある日ふと、「私も結構長いこと女優業をやっておるではないか」と思ったのでございます。ちゃんと数えたことはなかったけれど、4年間で360ステージほどやったらしい「奇蹟の人」が一区切りし、そろそろ違った角度からの刺激が自分に必要だ、そう感じた時期とちょうど重なるように「海外留学をしたら」という話が湧いてきたのでありました。

芸術家在外派遣制度

「奇蹟の人」のワンシーン。左がわたし
文化庁には、「芸術家在外派遣制度」というのがあります。ぶっちゃけた書き方をいたしますと「芸術家を名乗っているあなたたち! どうせ貧乏なのでしょ? 勉強したいのなら出してあげるから好きなことをしてらっしゃい」てなわけでして、音楽、美術、映画、演劇などなど、それぞれの分野から何名かが選出されます。

この制度、ずいぶんと評判がよろしいようでございます。それもそのはず、行きたい場所、研修先、住むところ、どんなことをするのか、押し付けられるものは一切なくすべてを自分で決められるのですから。

どういう基準で選ばれるのか…

ルーマニアでの研修先となる「ブランドラ劇場」。チャウシェスクが倒され民主化されるまでは国立の劇場だった
よく見るオーディション風景のように、審査員たちの前で演技をしてみせる、というわけではございませぬ。これまでの実績、どういう人物が推薦しているのか、どこの国で何をするつもりなのか、等々を提出する書類審査があり、審査員との面接をする2次審査を経て決定に至る。わたしの場合、ルーマニアへの留学を希望した、というのが大きな決め手だったかも知れない、と自分では思うのです。
日本では演劇というと、いまだロンドン、ニューヨークといった風潮があるようでございます。面接での質疑応答ももっぱら、「なぜ、ルーマニア???」に集中しておりました。

演劇先進国といわれている国々には実力のあるすばらしい俳優たちや、優れた舞台人たちが刺激的な舞台を創り続けているのは確かです。そういった国々への研修を希望する人の割合も多いと思います。しかし日本ではまだあまり知られていない東欧の演劇は、その質の高さと中身のユニークさで近年、世界的な評価を受けており、東欧演劇への関心もますます高まっているという状況にあります。その代表国がルーマニアなのです。

さて、この研修制度、あらかじめ申請した国から出国してはいけないことになっております。しかし、「芸術家だぁ!」などといっている人間たちのこと、決められた通りにおとなしくしているとは到底思えない。おまけにヨーロッパなんていろんな国と地続きだし(^^!)あくまでも噂ばなし…

80年代小劇場ブームの代表的な某劇団の主宰者どのは、この制度でロンドンへ研修中、当時ラブラブだった女優さんと香港へ遊びに行ったそうな。ところが、その色恋沙汰がワイドショーで報道されてしまって、研修先を離れたことがおおやけになっちゃった。後日文化庁へ呼び出されそうだが、「香港はイギリス領だ!」と言い張って事なきを得たとか、得なかったとか…これはあくまでも、噂ばなし…。

予備知識もほとんどなく、英語もルーマニア語も「おーまいがーっ!」のまま飛び込んでしまったこの国で、どんな経験をすることができるのか…ここまで読んでくださった皆様のなかには、「能天気な奴だ」と思われた方もいらっしゃるでしょう……たしかにそうなのですけれど…ね、裏に隠された不安な気持ち、ないわけじゃぁないんですよ…日本語は難しいですね。
<次回へつづく…>


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