SOHO、ベンチャー&なりたい人のオンラインマガジンべんべん
貧乏女優のルーマニア便り

第2回

ルーマニアってどんな国??? (1…UNU)

根本陽子
東京演劇アンサンブル・演劇集団アンゲルス/俳優部所属。「奇蹟の人」<アニー・サリバン>「十二夜」<ヴァイオラ>「オセロ」<デズデモーナ>ほか多数出演。「桜の森の満開の下」<生首>では踊り手としてイギリス、ブリヤート共和国、韓国、アメリカ公演に参加。「沖縄」<垣花シズ>ではイタリア、ベトナム、「かもめ」<ニーナ>で日本人として初めてモスクワ芸術座の舞台にたつ。
現在、文化庁の在外研修生として、ルーマニアに演劇留学中!
URL:http://fame.calen.ne.jp/~yoko/
E-mail:yokonemoto66@hotmail.com



ルーマニアって何語?

「桜の森の満開の下」……生首が踊る、というシーン。私の役名は“生首”
わたしもつい最近までこの国がどんな国なのか、何も知らなかったものですから「ルーマニアの首都は?」なんて聞かれて、よくブカレストとブタペストを間違えて軽蔑されていたものでございます。この国に派遣が決まった後もその前も、知人友人に逢うと「どうして演劇でルーマニアなの? えっ、ルーマニアってどの辺? ところでルーマニアって何語? ロシア語?」てなかんじで会話が始まるのでありました。

日本ではほとんど馴染みのないルーマニア。いきなり直面してしまった問題がやはり、語学………。文化庁の在外研修の書類審査に通ったという知らせが来たのが1999年10月の末。面接までのあいだわずか1週間。
「やばっ! 喋らされるやもしれんっ!」
しかし、その期間は「桜の森の満開の下」の本番で埋まってる……。慌てて、知り合いのルーマニア語の翻訳家に頼んで数行訳してもらう。が、しかし。なかなか覚えられない。まるっきり知らない言語をただ丸暗記するというのもつらいものがございます……歳のせいなのか?

ルーマニア語ってどんなかんじ??

演劇フェスティバルのポスター。ルーマニア読みで発音すると、「フェスティヴァル(ゥル) ナツィオナール デ テアトル」。英語と同じスペルでもローマ字読みで読むとまったく違って聞こえます
ルーマニアは「ローマの末裔」という意味。こちらの読み方では「ロムニア」……そういわれてみればそれっぽい響き。日本に馴染みのある国にイタリアがあるが、イタリア語よりも、もっとローマ字読み。いくつかローマ字にない音の表記はあるものの、書いてある通りそのまま読めばよろしい。だから読むのはとても楽なのであります。

ラテン語から発展してきた言語で、ほかにはイタリア語、スペイン語、フランス語などがありまして、そのなかでもルーマニア語はとてもラテン語に近い言語なんだそうです。隣のブルガリアなんかに行っちゃうといきなりキリル文字で、もうまったく読めません。大昔、誰かが間違って鏡に映ってる文字を書き写しちゃったんじゃないの??といいたくなる、あの文字です。

とりあえず出発までに、少しは何とかせにゃならん。ルーマニア語を教えてくれるところを探してみる。見つからない。……仕方ない、独学か……。本屋へ走る。
「ルーマニア語の本はどこでしょう?」「ここです」と指差された本棚には、旅行用かと思えるような小さな本2冊と百科事典サイズのどでかい辞書1冊のみ。
「語学力ゼロの私が、なぜゆえにこのような特殊言語を学ぶことになってしまったのか……」紀伊国屋書店の片隅で、しばし呆然と立ちすくむのでありました……

ブカレストには昔ながらの大劇場のほかに小劇場もかなりあるようです。ここもそのひとつ。Luniは月曜日。月曜劇場という感じかな。読み方は「テアトルル ルニ」
泣き言をいってもいられないってんで、気合いを入れて本なぞ広げてみるが、「???……」英語と違って名詞に性がある。あの女性、男性、中性という奴であります。それによって動詞も形容詞も全部語尾が変化する。語尾がどの文字で終わるかで何種類も変化のパターンがある。語学のはずなのに、頭の中はまるで乱数表。ローマ字が飛び交っている。1ページを理解するのに1カ月。出発は10月。何とかなるはずはなかった……。
「ええい! 行ってしまえば何とかなるさ!」と腹をくくって搭乗ゲートへ。

でも、確かにそのようであります。ルーマニア語は言いやすさが先にあって、あとから文法がくっついてくる「いかにもラテン」という柔軟さがある言語なんだ、というのがわかってまいりました。語尾変化も、文章にして何度も口に出していると、韻を踏むようなリズムがある。日本を出発してそろそろ1カ月。頭の中の乱数表がだんだん薄らいでくるのを実感している今日この頃なのであります。


[次のページへ]