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貧乏女優のルーマニア便り

第3回

ルーマニアってどんな国??? (2…DOI)

根本陽子
東京演劇アンサンブル・演劇集団アンゲルス/俳優部所属。「奇蹟の人」<アニー・サリバン>「十二夜」<ヴァイオラ>「オセロ」<デズデモーナ>ほか多数出演。「桜の森の満開の下」<生首>では踊り手としてイギリス、ブリヤート共和国、韓国、アメリカ公演に参加。「沖縄」<垣花シズ>ではイタリア、ベトナム、「かもめ」<ニーナ>で日本人として初めてモスクワ芸術座の舞台にたつ。
現在、文化庁の在外研修生として、ルーマニアに演劇留学中!
URL:http://fame.calen.ne.jp/~yoko/
E-mail:yokonemoto66@hotmail.com



ルーマニアの演劇ってどんな感じ?

チャウシェスクが演説中に国民のブーイングに遭い、ヘリコプターで脱出した「革命広場」。ただいま大統領選挙の期間中
なぜこの国を研修先に決めたのか?
最初は「カン」としか言いようがなかったのであります。いろんな方の話を聞いたりしているうちに、興味の焦点がだんだん定まってきた、ということでありましょうか。

私も研修先を決めてからはじめて知ったのですが、東欧唯一のラテン民族であるルーマニアは、歴史の過程でその土着の民族文化と、ハプスブルグ文化(貴族的で繊細な文化)とドイツの質実剛健といわれる文化の融合地点であるという特色をもっています。
そして、彼らの芝居はその伝統的民族的なものがもつ力を、どう現代演劇に取り入れるかという試みを意識的にやっていると思われます。そこが欧米の演劇とはちょっと違うぞという印象をもつ要因なのかもしれません。

ブランドラ劇場入口。秋から冬にかけては、この「ハムレット」を目玉にしているようだ
ルーマニアは、1989年にチャウシェスク政権が崩壊し民主化の道を辿ることになるのですが、10年以上経ったいまも経済的な混乱を引きずるなかで、吹き出してくるさまざまな問題を抱え込んでいます。
その国が「まず芸術だ!」という政策を打ち出したという話を聞いて、
「ん?? 何だ??? 面白そうだぞ」
現代演劇というものが、そこに生きているものの“現在”を映し出す鏡であるなら、いまルーマニアで行なわれている芝居が面白くないはずがない!!と身を乗り出したわけでございます。

ましてや共産圏では役者さんはエリートだったのであります。最高の教育を受けている。劇場は国立、つまりは公務員ですね。「美しい母国語を習いたいなら、俳優に習え」と尊敬されていた俳優たちが、民主化されたとたん劇場から放逐されてしまったと、壁が崩壊した直後の東ドイツへ行っていた私の仲間から聞きました。
しかし、ルーマニアではそれが行なわれなかったということもあって、歴史上の変革を起こすだけのエネルギーがあり、実力もある俳優たちがちゃんと劇場に残っている。

「自分自身が揺さぶられる本物の迫力に触れたい」と○○年役者をやってきて、“自分の興味の焦点がどこにあるのか”ということを考えざるを得なくなってきている時期に、生活すること自体が大変な国で、しかし芸術のレベルは非常に高いというルーマニアに縁あって?しばらく身を置いてみることになったのが、自分で決めたこととはいえ不思議で仕方ないのであります。
人生は面白い、そう思えるような1年間にしたいものでございます。

ルーマニアでの初観劇は<シェークスピア>

シャプテ セーリ。演劇、オペラ、コンサートなど1週間のさまざまなイベントが掲載されている冊子。劇場などにタダで置いてある。手前は最近吸っている煙草……
さて、こちらに来て最初に観た芝居は私の研修先である<ブランドラ劇場>の「ハムレット」。大げさな芝居はしない。舞台装置もいたってシンプル。日本にはない感覚なのですが、どこの劇場でも、レパートリーシアターといって、ある期間内に何作かのレパートリーを日替わりで上演する。
考えてみれば、毎日違う芝居を上演しなければならないから、照明を含め舞台を飾りこむということは難しいのかもしれません。日本と比べれば照明、音響装置も不十分です。しかし、そのぶん役者は晒されます。実力のない奴はここには立てない、そう思わされるものが確かにありました。商業主義的にショーアップされたものではない骨太な芝居が演じられている。わくわくするではありませぬか。

いろんな状況がわからないまま、ここへ来てしまったわたしが当面できることといったら「芝居を観まくる」ということくらいしか今は思いつかないのであります。日夜「シャプテ セーリ」を開いて意味のわからない単語と格闘しながら、あたりをつけてあちこちの劇場へ出かけて行くのでありました。


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