コラム
ルーマニア便り

第9回

お国訛りもさまざま…外国人のためのルーマニア語講座
 
根本陽子

東京演劇アンサンブル・演劇集団アンゲルス/俳優部所属。「奇蹟の人」<アニー・サリバン>「十二夜」<ヴァイオラ>「オセロ」<デズデモーナ>ほか多数出演。「桜の森の満開の下」<生首>では踊り手としてイギリス、ブリヤート共和国、韓国、アメリカ公演に参加。「沖縄」<垣花シズ>ではイタリア、ベトナム、「かもめ」<ニーナ>で日本人として初めてモスクワ芸術座の舞台にたつ。
現在、文化庁の在外研修生として、ルーマニアに演劇留学中!
URL:http://fame.calen.ne.jp/~yoko/
E-mail:yokonemoto66@hotmail.com
べらぼうに高い授業料

さてさて、こちらに来てはや4カ月。時の経つのは早いものでございます。11月半ばから途中参加という形で始めた「外国人向けルーマニア語講座」、場所はウニベルシターテア・ポプラーラ(人民大学)。まあ、日本でいう市民大学や生涯学習センターみたいなところといった感じでありましょうか。

ほかにもさまざまな講座がございます。ヨガの教室やら英語やオペラや、変わったところではマッサージの講座。私たちが授業を受けているあいだ、隣の部屋から、背中でも叩いているのか、「パカ・パカ・パカ・パカ・・」とリズミカルな音が聞こえてまいります。

とまあ、各種多様。そのなかでも外国人向けのルーマニア語講座はべらぼうに授業料が高く500万レイ。ほかの講座は80万レイとか、まあ、そんなもん。でも週2回で4カ月、2万4000円くらいだから、日本の感覚では滅茶苦茶安い。が、しかし、なにせこちらの平均月収は100ドル。値段も外国人向けなのであります。

この講座、人民大学とはいえあなどれない。なかなかのボリューム。プロフェソアーラ(女性の先生)は長いこと外国人に教えているらしく、どこが分かりづらいのかなど、教え方のこつをよくご存知で。リズミカルに話しながら、黒板に膨大な量の例文を次から次へと書いていく。

生徒のメンバーは8カ国で13人。簡単にご紹介いたしますと、
アイルランド女性の「オルラ」、パキスタン大使館の大使で通称「ドムヌル・アンバサダ」、ブカレスト大学でトルコ語を教えている女性教師の「トゥリーン」、同じトルコの方では、あまり熱心に勉強しないトルコ大使館の「タメール氏」(アル・パチーノに良く似てるので、私は彼が来るとちょっと嬉しい(^0^))と「フセイン氏」。
トルコ銀行のお偉いさんらしい「ナーフィー氏」、フランス女性でやはり先生らしい「マリア・テレーザ」「リリアナ」、韓国からボランティアとして看護婦さんをしている「ウォンちゃん」(彼女は敬虔なクリスチャン)、スペイン人の年配男性で、友だち5人と暮らしているというちょっと謎の哲学者?「サントス氏」。ドイツ人でママは美貌のアナウンサー、パパはディレクターだという大学生の「ジョルジェ」。日本人では私とユキコさん……とまあ、今期のクルス(授業)のメンバーは例にも増して、老若男女、バラエティーに富んでおります。

私は落ちこぼれの生徒であったけど…

国が違えば言葉も違う、当たり前の話なのでありますが、これらが集まってひとつの言語を喋ろうとするときのさまざまな違いというものがとても面白い。

たとえば<訛り>。日本人は<R>の発音が苦手な人が多い。と言っても、<R>は舌を丸めるのではなく舌先を震わせる、いわゆる巻き舌であります。アイルランドのオルラはやたら<R>が丸まって発音されるし、フランスは<ツェ>とか<チ>というのが全部<シェ>になっちゃう。スペインは<V>がどうしても言えなくて<B>になる。

ルーマニア語は語尾変化するのでひとつの単語を覚えてもすぐには使えない。「えーと、この場合は……」なんてみんな考えながら〜の、言い直しながら〜の、つっかえつっかえ、お国訛りで喋る。何が言いたいのか先生はなんで分かるんだろう……私なんて理解不能……とルーマニア人が喋るルーマニア語より難解な言語がこの空間には存在しておるのであります。

でも、少しずつ話せるようになってきて(私は相変わらずのような気がするが……)お互いの人柄もなんとなく分かってきて、授業の合間や授業中や、ちょこちょこルーマニア語で話ができるようになってくると、どうやらみんな、別れ難い気がしているみたい。
授業中に携帯がしょっちゅう鳴っているナーフィー氏なんか、仕事がとっても忙しいだろうに、欠席はまずしない、で冗談ばっかり言ってる。授業も大事だけど、皆に会うためにやってきているという感じ。
「皆で一緒に食事がしたいなぁ……」
なんてちっちゃな声で恥ずかしそうに言っておった。ちょっとかわいい……(^^!)

国が違えば言葉も違う。言語が違うということは、生活習慣すべて含めて、思考体系が違うということでもある。でも、同じひとつのことをやりたくて、ひとつのところに集まっている人たちで、おまけにここには利害関係は存在しない。「異国の中にいる異人である」という認識が最初からお互いにある。

どんなところででも、こんなふうにいろんな人種が共に過ごせる空間を創ることができるのなら、世界中から争いなんてなくなるのになぁ……なんて、ふっと思ったりする。大げさな話かなぁ……。

あと2回でクルスは終了。どんな終わり方を迎えるのかしら。私は落ちこぼれの生徒であったけど、やっぱり皆と別れ難い。

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この日はプロフェソアーラのお誕生日。で、皆でお金を出しあって、先生の大好きなカマンベールチーズとシャンパンとお花とチョコレートをプレゼント
 
黒板消しがスポンジで、それをこの水の入ったペットボトルの中に突っ込んでプロフェソアーラはジャブジャブ。そのまま黒板を拭くのである。粉が飛ばないのはとってもいいんだけど、濡れた黒板に書かれた文字は読みづらいことこのうえなし。あぶり出しのように、乾くとだんだん字が現われてくる
  
休憩時間は皆で談笑。でも、私はルーマニア語だと無口になるので、いつも物静か