コラム
ルーマニア便り

第24回

ルーマニア・お土産談義
 
根本陽子

東京演劇アンサンブル・演劇集団アンゲルス/俳優部所属。「奇蹟の人」<アニー・サリバン>「十二夜」<ヴァイオラ>「オセロ」<デズデモーナ>ほか多数出演。「桜の森の満開の下」<生首>では踊り手としてイギリス、ブリヤート共和国、韓国、アメリカ公演に参加。「沖縄」<垣花シズ>ではイタリア、ベトナム、「かもめ」<ニーナ>で日本人として初めてモスクワ芸術座の舞台にたつ。
現在、文化庁の在外研修生として、ルーマニアに演劇留学中!
URL:http://fame.calen.ne.jp/~yoko/
E-mail:yokonemoto66@hotmail.com
 
帰国も間近とあって何に悩まされているか、というと<お土産>。お土産らしいお土産というのがどうも見当たらないのだ。観光地として洗練されているというわけでもなく、通常の商品も上質とはいい難いものが多い国ルーマニアで何を選んだらよいのだ??……と頭が痛い今日この頃。

ルーマニア名物・あれやこれ

よく観光地へ行くとその土地の名前入りのTシャツが売っていたりするけれど、ルーマニアのTシャツなんて見たことないな……あっドラキュラTシャツというのがある。ブラッド・ツェペシ(串刺し公と異名をとる)という人の似顔絵入り。ドラキュラ伯爵がルーマニア産というのを知らない人もけっこういる。私もそうだったかな(^^!)。

で、思いついたのが、サッカーのナショナルチームのユニフォーム。来年はワールドカップが日本で開かれるし。最近はリーグ落ちしちゃってるみたいだけど、ルーマニアはサッカーがけっこう強い。ディープな感じがしてよろしいのではないかしら……。

「ツィカ」という果物のプラムから作ったおいしいお酒もあるのだけれど、このおいしさは自家製が本領発揮? 工場で作ったものではどうも……。
ワインもとてもおいしいのだけど、これらは重すぎて持って帰るのが難儀だ。

んー、この国の蜂蜜は有名とのことなので、その関連の商品なんてどうかなぁ……蜂蜜から作られている「ジェロビタール」というメーカーの化粧品。<老化防止効果あり>なので女性にいいかしら。注射器入りの「生ロイヤルゼリー」なんていうのもある。でも、これは温度変化が大敵だから持って帰るのはややこしい。
じゃぁ「プロポリス」……プロポリスというのを調べてみたら、<砦を守る>という意味の言葉らしい。蜂の巣を細菌や外敵から守るための成分。天然の抗生物質なんて言われていて、液状のものや、固形のものが市場でも売られてる。アレルギー体質にもよいというので、最近、私はミントティーに入れて試飲中。

ところで、ルーマニアの美意識談義

このあいだ聞いた話では、アラブ人がお土産に、この液状プロポリスをたくさん買っていくらしい。どうしてかというと、これで目を洗うというのだ。宗教上、目以外を布で覆う。だから白目の美しさというのはとても大事なことなのだ、とのこと。
ほんとかなぁ……だってプロポリスって松脂とかに溶かし込んであるんだよ。真偽のほどはともかくとして、美に対する感覚は面白い。日本では「小股の切れ上がったいい女」なんて表現があるけれど、普段見えないからこそのチラリズムに色香を感じるわけである。

ところでルーマニアの美意識に<隠しつつ>なんていう婉曲な観念はないぞ、きっと……。女性陣は老いも若きもここぞとばかりに見せまくる。白い薄手のピッタリしたパンツルックに黒やら赤やらの下着を着けてたり、という具合に透けていようが、ブラジャーをしていなかろうが関係なし。で、男性陣もそれは当たり前のものとして眺めてる。

日本の女性たちは、自らの欠点だと思っているものは<隠しつつ>美しく見せたい、としているように思えるけれど、こちらでは関係ない。いわゆる腹だしルックというのでも、ほんとの腹だしをしてしまってよいのであろうか……という人もよくお見かけした。「“わたし”はどう?」という自己主張がまず先にあるのだ。おっと話が逸れてしまった……。

おばあちゃんのレース編み

いつもお土産やプレゼントは自分が欲しいと思ってるものを選ぶ。冒頭でお土産らしいお土産が見当たらないって書いたけど、ルーマニアにだって民芸品のお店はあるぞっ! ただ、そう感じるのは、消費国家に毒された私自身の好みの問題でもある、そんな気がしてきた。この国の人たちは手先が非常に器用だし、古いものを修理しながらずっと使い続けてる。断っておくけれど、上等なものを代々引き継ぐ、というのとはちょっと違う。早々買い換えるわけにはいかないのだ。消費することが先進国の証であるというのなら、この国はその対極にある。

おばあちゃんたちは、非常に細かいレース編みや刺繍でテーブルクロス、帽子、洋服やベットカバーなど、いろんなものをつくる。それらは街中でも売られてる。
「このレースは手編みだよ。何度洗ってもゆがみもしないし、駄目にならない。隣で売ってるのは機械編み。見たら違いが分かるから」と説明される。
決して華美ではない素朴なものだけれど、確かに、あまりの細かさに思わず「参りましたっ」といってしまうほどに感嘆する品である。でも、なかなか買う気になれない。……何故だ????

飽きたら違うデザインのもので部屋を飾り、気分を変える。汚れてしまったら、大して高くもないし違うものに買い換える。その時々の流行にあったインテリアや洋服などをそうやって買い換えてきた。だから、<長い年数を持ち続ける>ということだけでは、それほど触手を動かされないのかもしれない。

私の家でもむかしむかーしはピアノのカバーや椅子や鏡台などにはレース編みがかけられていた(我が家のは機械編みの安物だと思うけど)。でも今、本物のレース編みを喜んでくれる日本人の友だちが何人いるかなぁ……なんて思ってみたりする。
……うんっ、ひとつくらいは買って帰ろう……できたら、顔見知りのおばあちゃんから。

節約が信条のこの国では、夜、部屋の中は薄暗い。こうこうと明かりが点いている部屋ってあまりないの。ましてや年金生活者であればもっと……である。おばあちゃんたちがその薄暗い部屋の中で編み続けてるレース編みを日本の部屋で眺めたとき、ルーマニアという国で暮らしたことがある、ということの何かを思い出すことはちょっと素敵なことかもしれない。そんな気がしてきた。

見た目のインテリアを変えて気分を変える……そんなやり方も私は好き。でもその中にひとつだけ、一見価値のなさそうな、素朴な本物がこっそりずーっとおいてある。どうかな? ちょっと少女趣味すぎるかしらん……


貧乏女優から……

べんべん174号(5月31日号)で訪問記を書いたルーマニアのお隣の国、モルドバ共和国から「ウジェーヌ・イヨネスコ劇場」が来日し公演することに。そのときのご縁で日本ツアーの字幕担当!ということで、ただ今、冷や汗かきながら準備中。

96年の初来日公演では、朝日新聞社の「年間回顧ベスト5」に選ばれるなど、圧倒的な好評を得たベケット作品、通称「ゴド待ち」、そして劇団の名前となっているウジェーヌ・イヨネスコの作品「瀕死の王様」の2作品を前橋、東京、金沢の3都市で上演します。
彼らの、軽妙な笑いの中にある中身が持つ迫力は、注目!です。これは……絶対見ておいたほうがよろしいかと……

会場でお会いいたしましょう!!

 前橋公演:11月9日・10日・11日
 東京公演:11月13日・14日・15日・16日・17日・18日
 金沢公演:11月20日・21日
 ※公演日程の詳細はこちらをご覧ください>>>詳細(PDF12KB)
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<ツィカ>のためのグラスはとっても小さい。日本酒のおちょこ、という感じかな。上等のツィカは注ぐとふちにガラスの玉のような泡が数珠繋ぎにできて、これがなかなか消えない。フルーツの甘い香りはするけれど、味は甘くないのだ。このツィカを蒸留したものは<パリンカ>という
 
注射器入りの生ロイヤルゼリーとプロポリス。ロイヤルゼリーはルーマニア語では<女王蜂のミルク>。色が黄みがかった白だからかなぁ
 
民芸品屋さんの店先にて。民族衣装はなんだか可愛らしいデザイン。“ラテン民族”というイメージとそぐわない気がしている私…