コラム
役者という生き方〜貧乏ものともせず

第9回

“いのち”を感じさせてくれるもの…(1)
 
根本陽子/女優
「奇蹟の人」「十二夜」「オセロー」ほか多数出演。「桜の森の満開の下」では踊り手として、イギリス・ブリヤート共和国・韓国・アメリカ公演に参加。「沖縄」では、イタリア・ベトナム。「かもめ」ではニーナ役で日本人として初めてモスクワ芸術座の舞台にたつ。
2001年、文化庁芸術家在外派遣研修生として1年間のルーマニア滞在を終え帰国。貧乏をものともせず、「集団に依存しない真のクリエイターの姿」を模索しながら活動中。
URL:http://fame.calen.ne.jp/~yoko/
E-mail:yokonemoto66@hotmail.com
 
書くことも、お喋りも…何かと対話

私は原稿を書くとき、アレっ?と不思議に思ったり、感動したり、はたまた怒り狂ったり???と心を揺さぶられた出来事について、
……何でそう思ったんだろう、感じたんだろう
ってところからいつも始まってる。だから、書きながら考える……で、その時点で出せる答えを見つけ出そうとしてきた……だからいっつも時間がかかる(^^!)

でも、いつもひとりでパソコンの画面を見つめながら考えていることがすべてじゃない。より多くは仲間との対話のなかで取っ掛かりやら、答えやらを発見する……話しているうちに自分の考えがパッとまとまることはよくあるし、誰かが与えてくれたひと言が、あちこちに散らばってる“点”を1本の線に繋げてくれることも、よくある。だから、私は誰かを捕まえては、呑んでなくても非常〜によく喋る(^O^)/~

私のお喋りと同等か、はたまた上か?というお喋りな奴がもうひとりいる。気心知れた長年の仲間であり(ある意味)師匠でもある演出家・岡井直道くん。彼も飲み屋に行くのは好き。でもアルコールは1滴も駄目。なのにお勘定はワリカン。ソンな体質である……。

ソンな彼とのある対話……

私は前回原稿で<ヒトは、精神的に、どん底だ…と思っていても「生きねば…」と思うとき、なんとか一歩を踏み出そうとあれこれ考えて自分自身に仕掛けようとする。そしていつかは浮上してくる、と思いたい。そのしたたかさ、強さは、生きていくための――何モノかが人間に与えてくれたものかもしれないけれど――本能なのだ……>と書いた。これについて、
「んー、イマひとつの内容だったね」
……なんだとぉ〜
「そこを書くなら……」
と始まった。
私を通しちゃうから多分、彼の言いたいことと微妙〜に違うかもしれないけど……。

たとえば生と死…たとえば……この現代社会のなかで浮上しない人たちがいるんだよ。本能であるはずの「生きる」ということが出来ない人たち。たとえばね、食べるということすらに興味を持てない人がいる。周りの人間がその人たちの価値観で“彼を救おう”としていろんなことを言うけど、彼にとっては何ほどのことでもないわけだ。
結局その人はそのまま餓死してしまうわけだけれど。お兄さんであるその人のことを書いているネット上の女性作家がいるんだけれど、彼女はそんな彼自身の世界のほうにリアリティーを感じているわけだ。ものを創る人間は“そっち”のことを意識しないとだめだよ。人間の強さ、とかだけ言ってたら“いいことばっかり”ってことになるだろう?

どうも“生”というものはプラスのイメージで、“死”はマイナス面のイメージとして受け止められやすい。それと同じように、たとえば“困難”とか“苦労”とかいうものも<つらいなぁ>とか<苦しいなぁ>とかいうふうに取られやすいけど、僕たちを力づけてくれるってものでもあるんだよ。

たとえばモルドバ共和国のユジェーヌ・イオネスコ劇場の連中が抱えている苦労や困難を知ることで、彼らに共感し、何とか手助けをしてやりたいと思って行動しようとする。それは自分にとっての“世界”との関わり方というものを発見して、創り出すってことでもあるんだよ。それは僕たちを力づけてくれるってことだろ。

“死”というものもそういう面を持ってる。“いのち”を感じさせてくれる……そんな迫力のあるものに出遭うことは、自分たちの“生きる”ということに力を与えてくれるものでもあるよ。

……お気楽極楽に書かせてよぉ…ブツブツ

端々に考え方が出ちゃうんだよ。もの創る人間だってんならそこやってもらわないとね。ちゃんと書いてね。

うーむ、まだ無理……

うまく書けそうもないから対話形式で逃げた……でも、この<“いのち”を感じさせてくれるもの…>って言葉が、これまでの2カ月のあいだ、頻繁に私の脳裏をよぎることになる……前回原稿の終わりに少しだけ触れた、わが友人から深夜にかかってきた“HIV感染”という1本の電話があった日から……。

そしてそれはどうやら、私にこれからもしばらくついて回るキーワードってことになりそうである。というわけで、ちゃんと書けるようになるまで続けるつもりで、タイトルに(1)を付けたのです。……続く


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アンゲルスの主宰者:ガンで数年前にあちらの世界に行きかけたんだけど生還。相当体力的にはきついはずであるがいくつもの仕事を同時にこなしてしまう。精神力かな。詳しい経歴はこちら
 
最近、東京在住組の我が頼もしきブレーンたちと金沢へ。報告1割遊び9割。で、ここは昔の農具置き場を改装した手打ちそばのお店。露天風呂では東京からやってきたうら若きかわいい女の子をナンパ。姓が私と同じでダンサーだった…何か縁があるかもね