コラム
役者という生き方〜貧乏ものともせず
 

第22回

プチ放浪記?…夜行列車にて…
 
根本陽子/女優
「奇蹟の人」「十二夜」「オセロー」ほか多数出演。「桜の森の満開の下」では踊り手として、イギリス・ブリヤート共和国・韓国・アメリカ公演に参加。「沖縄」では、イタリア・ベトナム。「かもめ」ではニーナ役で日本人として初めてモスクワ芸術座の舞台にたつ。
2001年、文化庁芸術家在外派遣研修生として1年間のルーマニア滞在を終え帰国。貧乏をものともせず、「集団に依存しない真のクリエイターの姿」を模索しながら活動中。
URL:http://fame.calen.ne.jp/~yoko/
E-mail:yokonemoto@hotmail.com
 
リボブ(L'vov)からブタペストへ

2002年10月、ウクライナの国際演劇祭に参加したあと、ついでにほかの国もウロウロしてくことにした私。
今回の私の旅のお供は、若手映画監督の嬉野クンと、11月からドイツに1年間滞在することになってる森尾舞ちゃん。彼女は金沢市のスカラーシップ制度でベルリンのGrips theater(グリップス劇場)に演劇留学。ベルリン入りまで、まだかなり日にちがある。滞在予定先も決まってない状態の彼女は放浪せざるを得ないのである。(^^)

というわけで、とりあえず21時15分、リボブ発の夜行列車に乗り込む。3人用のコンパートメントはちょっと狭いかな…って感じだけど、洗面台もついててお湯も出る。ちょっと驚き。片側の壁に2段のベットは目に入ったけど、3段目がない。「???」と思ったら下段のベットの背もたれを持ち上げて作成する仕掛け。横になってみると、(あらっステキ) 意外と快適であった。

乗り込むと、ややあって、記入用紙を渡される。何を書けがいいのかはだいたいわかるんだけど…(外貨とか危険物の所持に関してとか)ウクライナ語かロシア語で書かれてる用紙は、どこの欄がそれに当たるのかがわからん。英語の用紙はないって言うし……元共産圏は書類が煩雑。迂闊に間違ったこと書いて、後でトラぶると厄介だし。で、めんどくさいから書かずにそのまま置いといた。

毎度不快にさせられる国境越え

夜行列車は宿泊代が浮くから助かるんだけど、「ええっま、このっ!」と怒鳴りたくなるのが熟睡中に起こる国境越え。

それぞれの国のお役人が回ってくるけど、きまって遠慮のない勢いで戸を開ける。まるでガサいれ(いや…経験したことはないけど)。びっくりしてるし寝ぼけてるから、わからない言葉はさらに意味不明だわ、2度3度と起こされて寝起きの悪い私はさらにご機嫌ななめだわ。(−−)/
「てゃんでぇ! ウクライナで何してやがたんだっ! くぉらっ!」って感じでいろいろ聞かれるし、ほんと、犯罪者扱い。でもやっかいな質問も、今回は映像の勉強で5年間カナダに住んでた英語ぺらぺらの嬉野クンがいるからラクチンなのだ。でもね……相手の英語が片言だから困っちゃうんだけど。

記入用紙を書いてない分は口頭質問。所持金聞かれたって所詮我々の持ってる現金なんてたかが知れてるわけで。まじめ?な私たちはコピーカ(ウクライナの小銭)までじゃらじゃら広げたけど、「それはどうでもいい」と無視された(−−)。驚異のインフレ!!??国の小銭じゃぁ……まぁ確かにどうでもいいわよね……。

たわいもない会話と憂鬱

朝、目が覚めてタバコを吸いに通路に出る。私たちのコンパートメントは最後尾。ぽけーっとしてたら、車掌さんが2人いて話し掛けてきた。

「これ何だかわかるかい?」
と指さす先には暖炉みたいなものが。
「???!!! あー、コークス?」
「これで部屋を暖めてるんだよ。お湯も出るだろ? 日本にもあるかい?」
「今は、もう使わないなぁ」
「日本はエレクトロニクスなんだろ」……ハイテク日本かぁ……艶っぽくないイメージだ……。3人で一緒にタバコをプカプカ吸いながらそんなこと話してた。

「吸殻はその中に捨てていいよ」と、車掌さんたちは笑いながら仕事へと戻っていった…けど…あれっ?? ところで何語で会話してたんだろ……しばらく時間が経ってこの文章を書いているけど……想像力だけで会話してるから、私の記憶の中ではおじさんたちのせりふは全部日本語なのだ……。(−−)/

私の語学力では、たわいもない会話でも一生懸命にならないとできない。そんなあいだだけ、いま、自分のなかにある憂鬱さを忘れることができたりする……。あーぁ、情けないなぁ……。憂鬱さの理由も、原因も、説明はいくらでもつけられる。自分が生きるということを放棄しない限り、一生かかって探していく答えなのだということもわかってはいる。……ん、だけど……んんんっー。

最後尾から見る景色は、自分が後ろに引っ張られるように流れてく……。こうして旅することが、一時の逃避になるのか、何かの意味を見つけられるのかは、自分次第……かぁ? な……。なぁぁんて感傷に浸っているうちに列車はケレツィ駅に入っていった。10時半、ブタペストに到着っ。

さてさて、プチ放浪の始まり始まり、なのだ。(^o^!)


 
 
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列車の中から in L'vov:私たちを見送りに来てくれた演劇祭ボランティアスタッフのソフィア(左)とアーニャ(右)。最後の最後まで一生懸命面倒を見てくれた。「(列車の)チケット失くしてしまえばいいのに…」なんて涙ぐんでて…ほんとかわいらしい子たちだったなぁ…
 
これで部屋を暖めるそうだが…私たちのコンパートメントは近かったせいかな? 暑すぎて何度も目が覚めた。それまでの毎日が寒すぎたからギャップが…(^^!)
 
ブタペスト・ケレツィ駅/宿のインフォメーションセンターにて:「いそふぉめしょそ」(下)とある日本語の貼り紙に大笑いしてたら、「直してくれ」と頼まれて…でも慌てた?嬉野クン、やっぱり書き間違えて「いんふぉめーじょん」…けど、そのまま置いてきた(−−)