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第25回 |
プチ放浪記?…いざクロアチアのザグレブへ! |
根本陽子/女優
「奇蹟の人」「十二夜」「オセロー」ほか多数出演。「桜の森の満開の下」では踊り手として、イギリス・ブリヤート共和国・韓国・アメリカ公演に参加。「沖縄」では、イタリア・ベトナム。「かもめ」ではニーナ役で日本人として初めてモスクワ芸術座の舞台にたつ。 2001年、文化庁芸術家在外派遣研修生として1年間のルーマニア滞在を終え帰国。貧乏をものともせず、「集団に依存しない真のクリエイターの姿」を模索しながら活動中。 URL:http://fame.calen.ne.jp/~yoko/ E-mail:yokonemoto@hotmail.com |
2002年10月、ウクライナ国際演劇祭に参加後、ついでにほかの国も回っていこっかしらん……というわけで、まず演劇祭開催都市のリボヴからハンガリーのブタペストへ。そこからクロアチアの首都ザグレブ行きの列車に乗り込む。旅のお供は映像監督の嬉野クンと、このあと1年間、金沢市のスカラーシップ制度でベルリンのGrips
theater(グリップス劇場)へ演劇留学する森尾舞ちゃん。
2等のチケットで1等へ
嬉野クンは5年間カナダにいた。で、英語ぺらぺら。
私も舞も、彼の語学力を頼り切っているので、誰に何を聞くのも全部彼におまかせ。でもヨーロッパで英語ってあまりメジャーじゃないのだ。英語がわからないのに、いい加減に答えてたりすることがケッコウあるのだ……。
かなりの余裕をもってケレツィ駅のホームに到着。貧乏旅行な私たちのチケットはもちろん2等。しかしどのワゴンだろ。フットワークの軽い嬉野氏は、すかさず駅員さんに聞いてくれたのだけれど……。 「んー、なんだかコレ“らしい”っすよ」 私たちは何の疑いもなくチャッチャと目の前のワゴンに乗り込み、どっかり腰を据える。でもホントは、ここは1等のワゴン。なにごとも、すべておまかせ状態、というのはよくないのね。
いざ出発。空いてるし、静かだし、何だか快適(そりゃそうだ
^^!)。さてさて、やがてシブい「グランパ」と声をかけたくなっちゃう車掌さんが回ってきた。その見た目を裏切らない温和な声で「チケットが違うよ」と静かに教えて去っていく……。その物腰から、 ……まぁ見逃してくれるのかしらん?? という能天気な私の思惑とは裏腹に、ややあって、弾んだようすでもう一度やってきたグランパ車掌、 「クロアチア国境までの1等料金の半分を払えばそのままでいい」 とのたまわる。賄賂かいっ! おまけに誰かに入れ知恵されてきやがったなぁぁっ!というか・ん・じ。
賄賂に領収証請求!
「英語を話せる人間がいるから、そこまでちょっと来てくれ」 で、嬉野氏は連れて行かれた。ほどなくして戻ってきた彼の話では、 「国境の駅から車掌が入れ替わるけど、その先でまた言われたら、同じことすれば大丈夫だろう、と言ってる……」 入れ替わった車掌に、 「そんなことぁ知らん。ブタペストからここまでを払え」 とか言われたら、まためんどくさいことになるしなぁ…んー…。
<グランパ>はまたやってきた。そして、いかに自分が“良心的”に“正当な”“正規料金の半額”を要求しているか、数字と距離を紙に書いて説明してくれる。それでも、歯切れの悪い私たちに業を煮やして、またもや嬉野氏を英語が話せる同僚!……きっと、そやつがそそのかしたのであろう……のところへ引っ張っていった。
偵察に行ってみると、2等は通路までスシ詰状態。嬉野氏はまだ口説かれておる。なので横から助け舟。 「こっちにいたほうが得策。あとで払ってないっていわれたらシャクだから領収書くれっって言ってみて」 で、言ってみ・た・ら、車掌さんは真っ赤な顔して、 「っっっおまえたち……わかってんのかぁぁ……賄賂に領収書切れるかっっっよぉっっ……」 という心を精一杯表現してた。まぁ…そりゃぁそうだわね…。
しかしこの悪習ってなんとかならんかのぉ……かといって、潔癖に「一切賄賂は払わんっ」というのもなぁ...mumumu...でもね、一段落したあと、何度となくバツが悪そうに私たちから身を隠していた車掌さんは、やっぱりその見た目通り、本当は<グランパ>な人なんだと思うな
(^^) そのようすがちょっと嬉しかった。
深夜のクロアチア入り
国境が近くになったらトラぶる前に2等車に移動しよっかな。そのころは空いてるかもしれん……さて、と・ご飯タイム。ウクライナで安い(12ドル)キャビアを仕入れてた。見るからに極上とは言い難い品なのだけど。でもいいのだ。 床にパン屑を巻き散らかしながら、しばらく食べたくないっていうくらい食べまくり、満腹になった途端に爆睡モードに突入する旅のお供たち。若いのぉ…(^^!) 国境前に2人を起こさなくちゃな……寝るわけにはいかん私は通路に出た。
クロアチアかぁ……無知な私には、内戦のイメージとK1のミルコ・クロコップしか浮かばない。到着時間は深夜0時。宿探しも困るに違いない。なかったら駅で夜を明かすか……それもまたよし。 どんなとこなのだろ。
真っ暗で何も見えない窓から顔を出してみる。風で息ができない。そのせいかな? 期待からかな? 息苦しくなって、自分でも驚くくらいに心臓がドクドクと動いた……次回はザグレブ編。
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ブタペスト・ケレツィ駅:クロアチア経由ベネツィア行きの列車。湯気が上がってたりすると「なんだか旅っぽいなぁ」とちょっと嬉しい |
キャビアパーティー…左のグレーはブタペストのスーパーで見つけたアンチョビの卵。はじめて見たので買ってみた |
アンチョビの卵:色がグレーなのでちょっとびびるけど…味は…アンチョビだった。食べ比べてみるとやっぱりキャビアのほうが美味しかったナ…安物とはいえ(^=^)/ |
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