ウクライナから列車でクロアチアに入り、船でアドリア海を渡ってイタリアの港町アンコーナーへ。回送列車に乗せてもらったり、とワイワイやりながらヴェネツィアまで辿り着いた。いやぁそれにしても……ここは名だたる観光地。これまでがこれまでなだけに物価の高さが身に染みるのだ。。。
イタリア料理を堪能したところで、一緒にプチ放浪をしていた男性陣2人はとうとう資金が尽きたか……ここでお別れ。機上の人となるべくミラノへと旅立った。ここから先は、か弱き乙女!!の2人旅なの、で、ございます。旅もいよいよ終盤。ヴェネツィアから、私の最終目的地オーストリア・ウィーン行きの夜行列車に乗る。
第1の乱入者/酔っ払い
列車は空いていて、2等で定員6名のコンパートメントには私たち2人だけ。「わーぃ!
横になれるねーラッキー!!」と言いながら相棒は爆睡モード。 さてさて、と私も横になって夢うつつの深夜0時過ぎ、途中の駅から乗り込んできた一団は両サイドのコンパートメントで大騒ぎ。若い男性がもの凄い勢いで私たちのコンパートメントの扉を開け、 ……なんやかやっっ!! 座っていいか?……てなことだと思うが…… 酒の匂いもするし、無礼だし、で、寝起きで不機嫌な私はもちろん断わる。ところが今度は絡んでくるし、しつこいのなんの。そのあとも何度となく乱暴に扉を開けては閉めるを繰り返すわ、隣から壁は叩きまくるわ。 ……それでも相棒はすやすやお休みだわ…(−−!) 私は起きてないとヤバイかな……。でもそのうち、大騒ぎしていた連中もちょっと静かになってきて、気がついたら私もうつらうつら。
第2の乱入者/謎の集団
お次の記憶は、中年男性のどアップがオープニング。 扉を開ける「ガシャンッ」という音で目を開けたら、目の前にはもうすでに顔があった。驚く間もなく、 「ウィーンまで行くのか?」 と聞かれ、 「そうだ」 と答えるのを聞くか聞かないうちに廊下に向かって、 「よし、入れ」 とホイスパーで叫ぶ男。その途端、一斉に4人の大荷物を抱えた男女がなだれ込んできた。棚から足元からすばやく荷物を押し込んだかと思うと扉とカーテンを閉めてみんな息を殺してる。どうやら最初の男がリーダーらしい。
ほかのメンバーに小声で指図をしながら、彼はカーテンの隙間から外の気配を伺ってる。 ……おいおい、である。 定員オーバーのコンパートメントには7人の人間と大荷物とでえっらいことになっていた。加えて犬猫のようなすさまじい臭気。
列車が動き出した途端、安堵の空気が流れて、紅一点のおばさまは十字を切りながら、 「ドアムネ…(女神様)」 とつぶやく。 ……な・な・何なんだぁ ……この人たちに何が起こったのだぁ ……犯罪者なのかぁ ……何に追われておるのだ?? ……というか……この人たちってルーマニア語じゃん。 あまりに呆気にとられてて、意識してなかった。
リーダーが「ほかのやつらを探して連れてくる」と出て行く。いやいやちょっと待てっ!! ここにさらに詰め込むつもりなのかいなっ!! 腹が立つような気持ちもあったのだけど、残された人たちが申し訳なさそうに縮こまってるのを見て、追い出す気にはちょっとなれなかった。それに事の成り行きを見てみたくて彼らの話をじっと聞いてた。
罵声飛び交う国境越え
ルーマニアでよく見かけたジプシーではなさそうだ。まぁ、一族郎党で夜逃げってとこかな。 ほかのメンバーはほかの部屋に落ち着いたらしく、リーダーはひとりで戻ってきた。でも居場所はないので通路で煙草なぞふかしてる。
さてさて国境が近づいてきた。まずはイタリア側のコントローラーが回ってくる。案の定、彼らが持ってたのはひとり分の、それもミラノ行きのチケットだけ。もめるのは当たり前。交渉するのはリーダーのみで、ほかの人たちは怒鳴られてもじっと縮こまってひと言も喋らない。
オーストリア側のコントローラーも回ってくる。 コントローラー「お前はイタリア人だろっ」 リーダー「いやっ俺たちはスペイン人だっ」 コントローラー「いいやっイタリア人だっ」 ……いや…だからルーマニア人だって と心の中でつぶやくわたし。
ところが「パスポートを見せろ」と言われると、みんな素直にポケットから出してコントローラーたちに見せる。もちろんルーマニアのパスポート。 ……何のための嘘なんだぁ ……そんな簡単にバレちゃぁ意味ないじゃん…… オーストリア側のコントローラーはだんだんエキサイト。私たち2人にも怒鳴り出して、イタリア側のコントローラーに「彼女たちは別だから」と止められたり。
それまで「次の駅で降りるか、金払えっ」などなどの罵声にじっと耐えていたおばさまも「そんなこといったって、お金なんかないわよぉぉ」とか細い声で逆切れし出すし……何だかもうぐちゃぐちゃ。 のんびりいけると思った夜行列車は、乱入者たちのおかげでけっきょく一睡もできず。
無賃乗車の人たちと無事ウィーンに
この話を知り合いのオーストリア人男性に話したら、 「やつらルーマニア人はこの国を金(きん)の国みたいに思って入り込んでくるんだっ」 「あいつらがこの国でたくさん犯罪を犯してる」 などなどぼろくそに言うのだなぁ。なんでも彼のおじいさんはナチスだったらしいが……。
まぁそれはさておき、ウィーンのようなきらびやかな観光都市と比べれば、ルーマニアはそりゃぁもう田舎で汚くて、と言うのも分からないわけじゃない。でも……なぁ……。 張り切ってみんなを仕切ってるリーダーはどこか抜けてるし、ほかの人たちも気が弱そうにただただ縮こまってる。それでも、彼ら一行はちゃっかりウィーンまで辿り着いてて……逞しいんだよなぁ。
そんな彼らに、私はやっぱり……駅のホームで、 「ラ・レベデーレ(さようなら)」 とルーマニア語でひと言だけ声をかけた。 ……がんばれよっ…って心持ち(^^!)
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