コラム
役者という生き方〜貧乏ものともせず
 

第31回

プチ放浪記?
〜最終地ウィーンから帰国
 
根本陽子/女優
「奇蹟の人」「十二夜」「オセロー」ほか多数出演。「桜の森の満開の下」では踊り手として、イギリス・ブリヤート共和国・韓国・アメリカ公演に参加。「沖縄」では、イタリア・ベトナム。「かもめ」ではニーナ役で日本人として初めてモスクワ芸術座の舞台にたつ。
2001年、文化庁芸術家在外派遣研修生として1年間のルーマニア滞在を終え帰国。貧乏をものともせず、「集団に依存しない真のクリエイターの姿」を模索しながら活動中。
URL:http://www.yocuta.com/
E-mail:yokonemoto@hotmail.com
 
ウクライナから始まったプチ放浪はハンガリー→クロアチア→イタリアとめぐって、最終地はオーストリア・ウィーン。ここには東京で同じ劇団だった女優さんが住んでいる。92年に東京演劇アンサンブルとドイツ文化センターとの共同企画でヨーゼフ・サイラーというオーストリア人演出家を招いた。彼との共同作業で何かを感じたのだと思う。その後、彼女はこちらに移り住んで女優という仕事を続けている。

ヨーロッパ式?気のながーい稽古

彼女が現在関わっているプロジェクトは、まだ日本ではあまり知られていない作家だそうだが、Marianne Fritz著<Naturgemaess(自然の法則)>を3年間にわたって読む?というもの。難解と言われている何千ページにもおよぶテキストを読んで議論を交わす。そして例えば、「今週末はテキストのある部分を、日本でいう朗読会のような形式で稽古場で公開する」……などなど、おそらく3年というスタンスでいろんな形での実験的な試みをやっていく、ということなのだろう。ほぼ毎日、朝10時くらいから夕方の5、6時までそれが続く……恐ろしく気の長ーい話だ……。いや、粘り強いというべきか(--)/。

私たちが新作を創る時、長い時でも、読み稽古、立ち稽古がそれぞれ1カ月程度。せっかちなのか、慌ただしい現代を生きてる、というのかしらんが、近年、稽古期間はどんどん短くなってきてる。稽古だけのためにそこまで時間が取れなくなってきているのだ……。
これほどじっくり取り組めることが、ものすごくうらやましくもあるのだけどね、んぁぁ……わたしにゃ無理だぁ。自分の興味がそんな長期間持続できるとは、とても思えん(--!)。

インスピレーションをもらった稽古場

1日だけだったけど稽古場を見学。中心街から少し外れたアパートの1階の、このプロジェクトのために借りたという、水場などはむき出しだけどお洒落な空間で、男性1人女性3人の俳優たちがテキストの一部を読み合わせてた。

彼女が「こんな難解なテキスト、とてもじゃないけどひとりじゃ読めないよ」と言っていたのだが、面白さをじっくりゆっくり探ろうとするかのようなその“恐ろしく気のながーい稽古”のありようがキーワードだった。

うらやましいほどの贅沢な空間の中、意味不明のドイツ語の奔流を音楽のように聴いていたら、今回の旅の中で、その時々心の中で引っかかっていた断片が頭に浮かんできて、それらがフワっと繋がった。
――“コラボレーション”って、私にとってどういうことなんだろ……。
ストーリを先につくりこむのではない、自分が興味を持ったものの断片をつなげていく映像の撮り方、芝居の創り方……エトセトラ……エトセトラ。

答えは出ないけど・帰国

そして、日本から帰国要請のメールが届く。
この10数年間の生き方で、いいも悪いも自分の中にため込んじゃってたものがあった……それらが噴き出すまでは意識していなかったようなもの……。

それを抑え込もうとしてもうまくいかず、参っていたのもホントなんだけど、そんな自分から潔く逃げるわけにはいかなくて(-ー)ウクライナの演劇祭に参加した。そしてそのままプチ放浪に突入。今の自分自身から抜け出すための答えを、この旅のあいだに出せたらいいのに……と願いながら……出るわけがないことも同時にわかってた。

わかってるんならいい加減帰れってことね……と苦笑い。そう思えたのは、芝居を創るということは自分の生き方を探ることだ、とこれまで続けてきて、それを見失っちゃったみたいになった私が、“難解なテキスト”を“人生”に例えたわけでも、“とてもひとりじゃ読めない”と彼女が言った言葉に、自分ひとりでは解決がつかないのだという思いを重ねたからとも違うのだけれど、でも今は「まぁそんな感じの理由です」と言っておく(-_-!)/。

彼女たちから受けたぼんやりしたイメージでしかないインスピレーションを舞台という形にするには、私の内側の動機が足りなさ過ぎる……“欲求”のようなもの。それって、自分に仕掛けるものなのか、充填させるものなのか、発酵させるものなのか、熟考すればいいものなのか、出会うべくして出会うまで待つのか、ぜーんぜんわからない。

けど、……いずれにしろ日本に戻らないかぎりどうにもならんのであろうと、重い腰を上げるしかなかったのだ。仕方ないな……帰りますかっ!
――“プチ放浪記?” 完・だす――


 
 
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